今日の雷蔵は、とても機嫌が悪い。
「雷蔵…」
「何、三郎」
きっと、他の奴らから見ればいつも通りに見えるのだろう。
だが、私にはまったくそうには思えない。
絶対に何かに怒っている、そんな目をしてる。
「なあ、雷蔵、私はお前になにかしたか…?」
「別に?どうしたの、そんなこと聞いて。」
「いや…」
駄目だ、取りつく島もないとはこのことか。
結局その日は雷蔵の機嫌は直らず、次の日になった。
(今日は…いつも通りだな)
なぜ、昨日はあんなにも機嫌が悪かったのだ?謎すぎる。
はぁ、とため息をつくと、庄ちゃんが話しかけてきた。
「鉢屋先輩、一応委員会中なんですから物思いに浸ってため息をつかないでください、キモチワルイです。」
「庄ちゃん酷い…」
「…また雷蔵先輩のことですか?」
「あー…まあそうなんだが…」
「今度は何をしたんです?」
「庄ちゃん、決めつけはよくないぞ、今回私は何もしていない。」
「……。」
「そんな疑いのまなざしで見ないでお願いだから。だが本当だぞ?」
「と、なると……、ん、あぁ、そうか。」
ぽん、と小さな手を打って、庄ちゃんは一人で納得している。
私にはさっぱりわけがわからない。
なんなんだ?そんな眼差しを庄ちゃんに向けると、
「顔、ですよ。きっと。」
「…顔?」
「昨日は、久々知先輩の変装をしていらっしゃったでしょう?」
「ああ、そうだが…」
雷蔵が、そんなことでヤキモチを妬いていたとでも言いたいのだろうか。
けれど、庄ちゃんは本気のようだ。
「だって、今日はきっと、いつも通りだったはずでしょう?」
「…ああ。」
そうか、雷蔵は嫉妬していたのか。
雷蔵は、私には雷蔵の顔を使ってほしかったのか。
なんと愛しいことだろうか。
(…なあ、雷蔵。私は、お前の顔がいっとう好きなんだからな。)
さあ、早く仕事を片付けて戻るとしよう。
彼の居る、私たちの部屋に。
鉢雷のような雷鉢のような。
どちらとも取れるように書いたので双忍です。
Twitterでの双忍フェスで出た小ネタを書かせて頂いたものです。
自分の顔をしていないともやもやして嫉妬が表に出てしまい、鉢屋にしかその変化がわからない双忍っておいしくないですか。
そして庄ちゃんったら…冷静ね…(し ろ め)